HHとはどこで出会ったのだったろうか?

確か数年前のダボス会議で、スリランカのサイドイベントを企画して、日本人のお客さんを20人ほど手配していた年。イベントのオーガナイズと慣れないお客さん達をご案内して、寒くて暗くて相当疲れた晩に、ダボスならではの夕食イベントの後に集まるごった返しのピアノバーの中。隅っこでカーボーイハットを被った中背で相当ふくよかな感じの男性を見つけて、ビジネスパートナーのマークがそっと私に言った。「ここのピアノバーのゲスト全員の費用を、今晩は彼がスポンサーしているそうだと聞いたんだ。」マークはスイス人だけど自称200人の親友がいるので色々な噂または情報を私に色々持ってくる。「桂から皆の代表としてお礼を言ってくれないか?彼はシャイで人前でそんな事を絶対言わないそうだ。」と。私はHHが誰かかを知らず、彼の所に言って、「こんばんわ。私はチューリッヒから来た桂です。今夜大混雑しているここのピアノバーのスポンサーだということですね。誰も分かっていないのに、ありがとうございます。」と言った。私の名刺も要らなそうに受け取って、本当にシャイなのか、「ああ。そうだ。」という返事。見かけも返事も面白くない奴、と言うのが第一印象だった。

誰にも分からないのにここの100人くらいの飲み物を一晩中スポンサーして自慢も広告も照れもしないなんて。

後から、HHはヒズハイネス(His Highness) の略で、中東の国の首相の息子だと知った。本名は超長いので覚えられないし、そんな長い名前を言えないし、結局それから私は彼をHH(エイチエイチ)とあだ名で呼ぶことにした。

中東のロイヤル

HHとは、何かの案件とかの機会に国に何度も招待されて、外国のイベントやスイスに来るたびにお食事に行ったり買い物を付き合ったりした。HHは交友関係が広く、多くの友人をお父さんの所有のホテル(フォーシーズン)にも招待するようで、私も何度か歓迎された。アルコールを飲まない国なので、ホテルでのアルコールは自己負担という約束で後はご招待だった。私の娘も気に入られ、彼女にもわざわざ大層なジュエリーが届けられたりもした。彼女は私より(多分彼女の好みとはかけ離れているのか)、もっと100倍そっけなく、「何か貰ったよ。」とだけ私に言った。仲良くすると何か問題がないかと想像するかもしれないが、アルコールも禁止で、何かを盗んだら手首を切られる、または自分が結婚していない女性に手を出したら、本人が結婚しないといけないという法律があるのでかもしれないが中東のロイヤルの人々は極めて安全で礼儀正しいという自分の経験を付け加えたい。HHの周りには、肩書きの高い人や世界的冒険家、ロイヤル、有名な映画俳優、ビジネスパーソンなどなどが常に居るので、今までにも色々な人々を紹介された。ホテルに着いた途端、HHが友人を紹介すると言って紹介されたのは、スティーブンセガール。アクション映画は見ない方なので見たこと有りそうだなくらいの感じで接した。

気を使いすぎない距離感

中東の手土産風プレゼントは、国内の商工会の会頭だったかを紹介されて「会って挨拶してきたら良いです。」と言われた時、「ナツメの贈答セット」が良いと言われたのでその土地柄なんだと学んだ。国外の人へのプレゼントは、お父さん(首相)の顔が入ったネックレスとか、スカーフとか。緑色が高貴らしく、緑色の石の上にコーランらしき詩が書いてあり、縁取りされているペンダントとお揃いの緑の石の腕輪を頂戴した事もある。中東の女性のお化粧は私から見ると歌舞伎のような大袈裟な感じだが、そういう人が身につけて負けない位のインパクトある大ぶりなものだった。一度は国旗のついた繊細な感じのブレスレットを頂いた。あまり目立たない国旗だったのでそれは壊れるまで身に付けたが、世界で持っている人は極めて少人数だったに違いない。気に入られたかもしれない理由は、HHには敬意は持つけれど、そんなに特別扱いしなかったことが気楽に思われたのかもしれない。ビジネスパートナーのマークは、HHのパーソナルセクレタリーとのWhat‘s Upのやり取りまでだが、わたしはHHと直接メッセージをするので、マークに伝言を頼まれたりもした。ただし、迅速なビジネスはやり難い国だ。大体、ラマダンの時期に行った時は、「この時期は契約などの決定をしてはいけない。」という習慣がある事を知った。

ラマダン

1ヶ月待てば決定するのかと理解したが、それから3ヶ月間は50度を超え、暑くて皆少しは涼しい外国に行く。都市ならロンドン、大きな船で地中海を周遊する人もいるし、スイスの別荘に避暑地として来る人もいる。

都市ならロンドン、大きな船で地中海を周遊する人もいるし、スイスの別荘に避暑地として来る人もいる。つまり決定権を持つ人は海外に出払ってしまうので、年の3分の1はビジネスが動かないと言うこと。

大体なぜ、ラマダンにおいでと言われたかだが、何も食べない1ヶ月?いえいえ、この期間は、日が暮れたら食べられるのだ。日が暮れたら、色々な人の邸宅でパーティーが夜中中開かれる訳である。大きな部屋の壁に沿って大きな椅子が部屋中に置いてある。その部屋の中に白い長い服をきて頭に布を輪っかを被っている男の人が沢山いて、女性もいて談笑している。隣の部屋では、大きなテーブルに色々な中東の食べ物が置いてあり、それぞれがそれを自分のお皿に持って頂く。これを幾つかの邸宅で朝まで梯子をする訳だ。

HH曰くこの時期は、友人や親戚と一緒に過ごす時期なのだそうだ。ネットワーキング期間というか日本のお盆みたいな感じだろうか。それからイスラムの国は、お金を貸すとか利子とかが存在しない。ある大きな会社の会長に会った時に、西洋でのように利子で貸すのではなく、株を持ち合うみたいな形で、もっと相手のビジネスにコミットすると説明を受けた。

HHのやりたい事は?

私はファミリーオフィスサービスとして投資案件とかにも関わっているので、色々な投資案件の話もあった。
砂漠で食料の問題があり、自給自足に備えて、スリランカの農地を買いたいので手伝ってくれないかと頼まれた。
スイスで4つ星のホテルをお姉さんが買いたいので探してくれとも頼まれた。
お母さんのお土産にチューリッヒのデパートで買い物にもお付き合いした。セールスになっているスイス製のパジャマとかを購入されていた。F1レースのVIP客として招待された時は、日本のハイエンドのビジネスをされている方をお連れした。

マークともHHは一体何をしたいのだろうか?と何度も話ししたことがあるが、彼は後継者の弟なので、もしかしたら、自分の存在感をどこかに見出そうとしているのかもしれないのかなあと思った。

スイスのボーディングスクールに行っていたので、そこでも世界中の友人が出来ただろうし、何か国が関わるオフィシャルなイベントには、開会式とかのテープカットとか、正式なお客様の1人をして良く出席をしている。経済的に何でも手には入るけど、ファミリーの中での後継順位や、体型やあまりチャレンジして変更できないことも沢山あるかもしれない。それでも精力的に世界中の興味深い人たちと交流したり、交友関係を結んでいるのは、国の為、ファミリーの為、そして自分の為でもあるのだろう。確かにとても色々勉強している方なので、普通にお話をするのがとても面白い。

HHの成功の知恵と戦略は、一言でいうと、人脈をケアする、気の置けない数人を周りに置く、色々知識を身に付けるために学び続ける、国やファミリーでの立場をわきまえて行動する、だろうか。

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Dr. Katsura Suzuki
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